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玉山群峰線

高山病の予防と処理

高山での体調管理

登山では海抜が高まるにつれ、外的な環境要因も変わってきます。そしてその変化はかなり複雑です。変化には、次のようなものがあります。

  1. 酸素量は高度が上がるにつれ徐々に減っていきます。玉山の山頂(約4000メートル)に着いた時点で、酸素量は0m地点の61.6%にまで減ります。生理機能も低下し平地ほどではなくなります。
  2. 高度が100メートル上がるごとに、気温は約0.6℃下がります。加えて温度低下に伴い、大気中の水蒸気圧も下がります。そのため高地では、空気は0m地点より遥かに乾燥しています。
  3. 気圧が低いため、空気は体積がはっきりと膨脹します。他にも、高度が高いほど、紫外線など太陽からの照射も強くなり、空気による吸収力も比較的小さくなるなどします。

環境要因が変わり、人体のメカニズムが急激な低酸素、低気圧の状態に置かれることで、血液における酸素飽和度が平地より低くなるという生理的な変化が起こります。変化には次のものがあります。

  1. 呼吸器系:呼吸が激しくなることで酸素飽和度が高まるものの、それにより換気が過剰となり、アルカローシス(赤血球の酸素放出能力減少)を引き起こします。加えて水蒸気を吐き出してからは、体内で水分が減ります。それにより血液粘度が高まり、血流への抵抗が増え速度が落ちます。
  2. 心臓循環器系:酸素飽和度が下がることで、動悸が激しくなり酸素の不足を補おうとします。

ほかにも、体内の各腔部、室部、消化器もガスにより膨脹し、腹部膨満感、頭痛などの症状が起こります。これらは全て正常な高度障害であり、大半の人はきちんと体調を整えさえすれば登山活動が続けられます。それでもこれを軽視し、適切な対応を講じなければ、急性高山病などに発展し、登山の安全に害を及ぼす恐れがあります。
 

高度障害

登山は心身の健康促進に役立つものであり、心臓、肺、血液の機能を強化し、個人の体力と忍耐力の増進に繋がります。奨励されるべきレジャー活動だと言えるでしょう。しかし国外の研究によれば、2,440メートル以上の高度では高地肺水腫が、そして2,750メートル以上の高度では高地脳浮腫が発生し得ると報告されています。そして急性高山病は3,000メートル以上の高山での旅でよく見られる病状だとしています。

さらに、高偉峰医師の調査研究によれば、合歓山での降雪時期には、患者の約半分以上は高山病であり、また玉山への登山者では25%以上が急性高山病に該当すると診断されるとしています。台湾の高山地域では、高山病の症状が現れる観光客も少なくなく、なかには、深刻な病状が起こる恐れのある、ひいては十分に命にかかわる病状が起こる人までいます。
分析によると、数多くの山域で予想外に起こる事例は高山病に関係しているとのことです。そして山の上では高地脳浮腫により歩行が不安定となり崖から転落したり、急性高山病による衰弱または高地肺水腫による呼吸困難が原因で、行動が緩慢になり、風や寒さをしのぐキャンプ地に着けず低体温となったりするなどしています。台湾には高山病がないのではなく、以前はこれがあまり理解されてこなかったため、しばしば軽視したり、または風邪、肺炎など他の病気だと誤認して対処したりしたことで、治療の機会を見逃していただけなのです。深刻な高山病はそのほとんど全てが予防できます。そのため高山病について十分に理解することでしか、本当の意味で病気を未然に防ぎ、登山の安全を確保することができないのです。以下に高山病の症状、予防と治療法を紹介します。高山を旅行する際には参考になさってください。

高山病の判断については高山病診断表をご参考ください。

症状

急性高山病
急性高山病

急性高山病

  • 軽度の症状:頭痛、眩暈、拒食、不眠、吐き気、末梢性浮腫、全身の倦怠感など。
  • 中度の症状:嘔吐、一般の鎮痛薬で緩和できない頭痛、排尿量の減少など。 
  • 重度の症状:意識障害、不安定な歩き方、休息時の呼吸困難、肺部からラ音(異常な肺音)が聞こえる、およびチアノーゼ。

高地肺水腫

  • 初期の症状︰運動能力が衰える(しばしば最も初期の症状)、から咳(乾いた咳)、疲労、動悸が速まる、呼吸が速くなるなど。
  • 末期の症状︰休息時でも呼吸困難、痰が多く混じった咳、喀血、極端な衰弱、チアノーゼなど。

高地脳浮腫

  • 深刻な頭痛(しばしば歩行、力を入れる行為または横たわることでより深刻になる)、不安定な歩き方、吐き気、嘔吐、判断力の異常、行為の異常、幻覚、意識が混乱し意識不明に至る。
  • そのうち不安定な歩き方は高地脳浮腫で最も重要で、加えて最も有用な早期臨床指標と考えられています。

予防

高度上昇での原則

予防は治療に勝るものです。ゆっくりと山を登ることで、時間面での余裕を体に与えて高度の変化に適応させます。これは高山病予防で最も重要な規範です。

一般的な予防原則

酸素ボンベ(スプレー)またはポータブル高圧チャンバーの持参、激しい活動を避けること、保温、禁煙・禁酒、鎮静薬の服用、炭水化物を多く摂取すること、体内のガスを生み出す食物(豆類または炭酸飲料など)を避けることなどの全てで、高山病が起こりにくくなるか防ぐことができます。

医薬品での予防

医薬品での予防

医薬品での予防

薬品では、現在ではダイアモックス(Diamox,  acetazolamide)、ステロイド(dexamethasone)、カルシウム拮抗薬( nifedipine)などが、高山病予防に有効だと実証されています。サルファ薬にアレルギーがある場合やG6PD欠損症の患者は、ダイアモックスの服用はできません。

その他

3, 000メートル以上の高山に登る場合には、まず標高2,500メートル程度の地域で体を高度に慣らしてから(約1晚)、改めて登山活動をしてください。

24時間以内に平地から3, 000メートル以上まで上昇する必要がある場合には、薬品を服用しての予防を考慮してください。

治療

加壓艙

加壓艙

早期に察知し、早期診断、早期治療をすることが、治療成功のポイントです。治療の主な原則は次の通りです。

  1. 高度がある環境を離れる(下山する)こと。高山病治療の黄金律は「DOWN、DOWN、DOWN」-つまり「降りる、降りる、また降りる」です。
  2. 症状が起こる環境を変えること(酸素を与え、気圧の高いところに行きます)
  3. 休息 (酸素の消耗を減らします)
  4. 医薬品での治療