高山での体調管理
登山では海抜が高まるにつれ、外的な環境要因も変わってきます。そしてその変化はかなり複雑です。変化には、次のようなものがあります。
環境要因が変わり、人体のメカニズムが急激な低酸素、低気圧の状態に置かれることで、血液における酸素飽和度が平地より低くなるという生理的な変化が起こります。変化には次のものがあります。
ほかにも、体内の各腔部、室部、消化器もガスにより膨脹し、腹部膨満感、頭痛などの症状が起こります。これらは全て正常な高度障害であり、大半の人はきちんと体調を整えさえすれば登山活動が続けられます。それでもこれを軽視し、適切な対応を講じなければ、急性高山病などに発展し、登山の安全に害を及ぼす恐れがあります。
高度障害
登山は心身の健康促進に役立つものであり、心臓、肺、血液の機能を強化し、個人の体力と忍耐力の増進に繋がります。奨励されるべきレジャー活動だと言えるでしょう。しかし国外の研究によれば、2,440メートル以上の高度では高地肺水腫が、そして2,750メートル以上の高度では高地脳浮腫が発生し得ると報告されています。そして急性高山病は3,000メートル以上の高山での旅でよく見られる病状だとしています。
さらに、高偉峰医師の調査研究によれば、合歓山での降雪時期には、患者の約半分以上は高山病であり、また玉山への登山者では25%以上が急性高山病に該当すると診断されるとしています。台湾の高山地域では、高山病の症状が現れる観光客も少なくなく、なかには、深刻な病状が起こる恐れのある、ひいては十分に命にかかわる病状が起こる人までいます。
分析によると、数多くの山域で予想外に起こる事例は高山病に関係しているとのことです。そして山の上では高地脳浮腫により歩行が不安定となり崖から転落したり、急性高山病による衰弱または高地肺水腫による呼吸困難が原因で、行動が緩慢になり、風や寒さをしのぐキャンプ地に着けず低体温となったりするなどしています。台湾には高山病がないのではなく、以前はこれがあまり理解されてこなかったため、しばしば軽視したり、または風邪、肺炎など他の病気だと誤認して対処したりしたことで、治療の機会を見逃していただけなのです。深刻な高山病はそのほとんど全てが予防できます。そのため高山病について十分に理解することでしか、本当の意味で病気を未然に防ぎ、登山の安全を確保することができないのです。以下に高山病の症状、予防と治療法を紹介します。高山を旅行する際には参考になさってください。
高山病の判断については高山病診断表をご参考ください。
症状
急性高山病
高地肺水腫
高地脳浮腫
予防
高度上昇での原則
予防は治療に勝るものです。ゆっくりと山を登ることで、時間面での余裕を体に与えて高度の変化に適応させます。これは高山病予防で最も重要な規範です。
一般的な予防原則
酸素ボンベ(スプレー)またはポータブル高圧チャンバーの持参、激しい活動を避けること、保温、禁煙・禁酒、鎮静薬の服用、炭水化物を多く摂取すること、体内のガスを生み出す食物(豆類または炭酸飲料など)を避けることなどの全てで、高山病が起こりにくくなるか防ぐことができます。
医薬品での予防
医薬品での予防
薬品では、現在ではダイアモックス(Diamox, acetazolamide)、ステロイド(dexamethasone)、カルシウム拮抗薬( nifedipine)などが、高山病予防に有効だと実証されています。サルファ薬にアレルギーがある場合やG6PD欠損症の患者は、ダイアモックスの服用はできません。
その他
3, 000メートル以上の高山に登る場合には、まず標高2,500メートル程度の地域で体を高度に慣らしてから(約1晚)、改めて登山活動をしてください。
24時間以内に平地から3, 000メートル以上まで上昇する必要がある場合には、薬品を服用しての予防を考慮してください。
治療
加壓艙
早期に察知し、早期診断、早期治療をすることが、治療成功のポイントです。治療の主な原則は次の通りです。