河流はけして一朝一夕で形成されるものではありません。雨がふると、その水は直接海や渓流、湖へと流れ込みます。また木の葉などに付着した水滴は、ゆっくりと地上にこぼれ落ちます。地中の水分の一部は植物によって吸収、蒸散され、あるいは直接蒸発します。そして一部の水分は浸透して徐々に谷へと流れ、小川から大河へとつながっていきます。このため澄みきった水源は多層的な森林保護、水土保全の良好な集水域からもたらされます。

台湾の島の地形は西と東で差異が大きく、西側の流路は長く、東側は短くなっています。また、中央山脈が全台湾の水系の主な分水嶺です。玉山国家公園西側の河流は八通関および塔塔加鞍部が分水嶺で、南に荖濃渓、楠梓仙渓、拉庫音渓などの高屏渓上流の主な支流が、そして北に陳有蘭渓、郡大渓、沙里仙渓などの濁水渓上流の主な支流が流れています。また東側は中央山脈東の拉庫拉庫渓およびその支流を起点に秀姑巒渓へと流れ込んでいます。なかでも八通関付近では、陳有蘭渓の激しい侵食作用により形成された金門峒大断崖の景観を見ることができます。崩壊地の絶え間ない発達の結果、陳有蘭渓と荖濃渓の分水嶺が南に移動し、これにより将来的に荖濃渓の水源が河川争奪地形となってしまいます。

このほか、高山地区は地形の起伏により、豊富な降水がくぼ地に流れ込みます。このくぼ地の下が頁岩などの不透水層の場合、さらに水が溜まり高山湖が形成されます。中央山脈の大水窟、塔芬池、嘉明湖、南横の天池などがそれです。これらの湖は登山者にとっての癒しです。しかし、その集水域が周辺の高原に限られているため、一旦汚染されると回復が困難になります。そのためこの最も脆弱な生態系は、特に注意して維持管理する必要があります。