このエリアは、気候が暖帯、温帯、寒帯と3つに分かれ変化に富んでいるので、植物の種類が豊富です。面積は台湾全体のわずか3パーセント程度に過ぎませんが、台湾で見られる原生植物の半数以上が存在しています。また、亜熱帯植物だけでなく、寒冷帯の植物を見ることもできます。いずれも安定した植生をなしており、大まかには高山性植物と寒冷性森林の二種類の植物群系に分かれ、さらに、草原や松林などもありますが、これらは山火事や伐採後にできた次生植物です。

〔高山性寒帯樹林〕
寒帯樹林は植物が生存可能な極限とされ、高緯度、あるいは高山と雪山の境界線に現れます。詳しくは極地性寒帯樹林と高山性寒帯樹林とに分かれます。高山性寒帯樹林は玉山国立公園内の玉山及び中央山脈の馬博拉斯山、秀姑巒山、関山など3600メートル以上の地区に分布します。この地区は毎年冬の降雪期間が四ヶ月も続き、風が強く、土壌が弱いため、植物は生存しにくく、特殊なもののみが絶滅せずに生き残ることになります。植物の組成は単純で株は低く、塊で群生します。しかし、花は鮮やかで見るものを引き寄せます。こういった気候帯の植物は地下に根や茎を張るので、冬を越すことができます。コケ類は至る所に繁茂します。この寒帯樹林は細かくは二種類の植物群落に分かれます。一つはニイタカビャクシンやニイタカシャクナゲといった大本植物で、強風や重雪に耐えるもので、匍匐状の灌木です。もう一つは、稜線近くに開けている草本群落或いは裸地です。毎年6月から8月がこの地区の開花季節で、9月から11月は果実の時期です。この実は、野生動物の食料となるほかにも、野生動物を経由してこの植物の種子を広げることができます。これは自然界の神秘とも言われ、興味深い現象と言えるでしょう。 
高山性寒帯樹林
〔森林〕
寒帯樹林の下方には広大な原始林が広がっています。森の形成は土壌、雨量及び気温などの条件と密接不可分な関係です。国立公園内は雨季乾季に関わらず雨量は豊富で、乾季でも相当の降雨量があり、湿度も高くなっています。このために、広大な森林が形成されました。海抜により亜高山帯針葉樹林、冷温帯山地針葉樹林、暖温帯山地針葉樹林、暖温帯雨林及び熱帯雨林の五種類の郡系に分かれます。

〔亜高山帯針葉樹林〕
高山性寒帯樹林の下部、海抜3000メートルまでの樹木は常緑樹が多く、亜高山帯針葉樹林の分布区域です。この地区の林木は森林境界線付近ではまばらになっていますが、そこから深く入っていくに連れ、次第に密林を形成していきます。この地帯の土壌は高山性寒帯樹林よりも良好ですが、地形的に傾斜があり、強風暴雨の浸食を受けるため、石塊が多く見られます。風を避けられる緩い傾斜の谷地は湿った環境となっています。この乾燥と湿った二種類の環境がニイタカビャクシンとニイタカトドマツの二種類の植物群落を形成します。ニイタカビャクシンは玉山や秀姑巒山の下部にある谷中に分布しています。ニイタカビャクシンは又の名を「香青」といい、寒帯樹林地区では地面に這うように成長しますが、この地区では直立して高く聳えています。これは生育環境が良いためです。林の下には多くの陰湿性の高山寒帯草類があります。ニイタカビャクシンの下部にはニイタカトドマツが分布しています。林の下には、人間の頭大のニイタカヤダケやニイタカシャクナゲ、高山バラなどの潅木が育成し、湿ったところにはコケが生え、ビャクシンに巻きつく様子が見られます。

〔冷温帯山地針葉樹林〕
冷温帯山地針葉樹林は、海抜2500から3000メートルの間に分布し、ニイタカトドマツの下方に位置します。この地区は降雨量が充分で、一年中湿潤の気候です。ただし、植物の生育地は山の上か山の背であり、強風の襲撃を受けやすく、土壌も乾燥しているので、生長環境は良好とは言えません。涼しい気候が植物の生長に大きな影響を与えております。この地区の森林はアブラスギとニイタカトウヒで形成されています。アブラスギは日のあたる斜面あるいは山の背の比較的乾燥した地区で、ニイタカトウヒは日陰の斜面や湿った谷地で生長します。湿度が中間のところでは、二種類の樹木が混じりますが、通常はそれぞれで純林を形成します。林の下には潅木や草類があります。

〔白木林と草原〕
ニイタカトドマツ、アブラスギの分布区内にはよく広大な面積に広がったニイタカヤダケや高山ススキを見かけます、これは山火事や原始林の乱伐の結果できたもので、有名なものには八通関草原、鹿林山地などがそうです。森林火災に遭い、樹木が焼け死んだ後、この地区は気温が低いために、樹幹が腐敗して倒れることはなく、白木林になるのです。玉山西峰の白木林がこれにあたります。林の下にあるヤダケは地下の茎で火を避け、他の草よりも迅速に芽を出し、繁茂し、焼け跡を草原へと生まれ変わらせます。上層の林がないために、土砂崩れしやすく、岩石が裸で表れています。付近に種が落ち、火災に遭うことがなければ、徐々に森林へと回復していきます。

〔暖温帯山地針葉樹林〕
冷温帯山地針葉樹林の下方、海抜1200メートルに至る間は、暖温帯山地針葉樹林が分布しています。この地区は針葉樹と広葉樹が交接している地帯で、台湾で雨量が最も多い地区とされています。湿度も極めて高く、霧林とも呼ばれています。しかし、温暖湿潤な気候のため、広葉樹の発育には適しています。海抜2200メートル以下は湿度も中間で、傾斜もゆるく、土壌が肥沃な地帯なので、広葉樹へと植生交代します。台湾紅檜、ひのき、台湾杉、台湾いちいなど珍しい樹木がここで生育しており、そのため、大部分の原始林が伐採の憂き目に遭いましたが、代用として柳杉など人工杉、或いは紅檜の幼木が再び植えられています。造林に失敗すると、草地か、はんのき、松林に交代します。

〔暖温帯雨林〕
暖温帯雨林と暖温帯山地針葉樹林の分布区域はほとんど同じですが、分布の上限が若干低いです。すべての雨林は落葉樹と常緑樹の混合群落で、暖温帯及び亜熱帯の降雨量が多い地域は広葉樹の群落となります。落葉樹も含まれるため、冬と夏では景観に変化があります。暖温帯雨林は玉山国立公園海抜2100メートルから900メートルの間に分布し、樟科やクリ科の植物が最も多いです。四層の構造になっており、多くは藤類、寄生植物で、湿った樹幹にはコケ類やシダ植物が覆っています。海抜は低いため、原始林の群落は少なく、人工林の杉や桂竹林、孟宗竹などに取って代わられています。

〔熱帯雨林〕
熱帯雨林は玉山国立公園内の海抜が最も低い地帯に群生する植物です。東部の拉庫拉庫渓谷の900メートル以下の地区だけです。この地区は高温多雨な気候のため、大部分が常緑広葉樹で、たまに落葉樹が散在します。林の中には藤の蔓や寄生植物が繁茂しています。熱帯雨林分布地区は現在開発が進み、発育良好な原始雨林は非常に稀少な存在となっております。玉山国立公園東部は開発が比較的遅いために、今でも原始林がいくらか残されています。